橋本だんじり物語 橋本だんじり物語】−[よもやま話]−[橋本型だんじり考察 1]

橋本型だんじり考察

担い棒

和歌山県橋本市東部の隅田八幡神社氏地と隣接する一部地区にのみ見られる担いだんじり。
だんじりを担いでしまうという他ではあまり見られない祭の形態により独自の発展を遂げたため、その構造や運行方法には興味深い特徴が多くみられます。
そこでこれらを「橋本型の特徴」と定義づけて、他との違いや共通点などを研究してみることにします。
(このページのコメントは管理人と酒呑童子さんとの共著です。)

垂井 橋本型と言えば数少ない担いだんじり形式。
多くの人に担がれ練られるために付けられる担い棒は太く長く、横方向にも数本が等間隔に配置され担ぎ手がくまなく並ぶようになっています。

上地車で一般的に言う「肩勢棒」という呼び方は橋本型だんじりでは使われず「担い棒」または「おこ」と呼ばれているようです。
だんじりの左右に付く太くて長いものを「親おこ」と呼びます。
まっすぐに伸びた杉の磨き丸太が使われています。

(写真は垂井)
胡麻生 前後に長い担い棒は町内運行には大変、狭い角では苦労します。
また担ぎ手が横手にまで担い棒に付くため幅も広く必要で、道路の一車線は完全にふさいでしまいます。
道幅の狭い橋本では不向きではないかとお考えでしょうが、それ以前に大昔の道路事情は木製コマの地車に不向きな水たまりの地道だったため、必然的にだんじりを担い上げて運ぶことになつたと思われます。

難所の狭い角を曲がる際に先端や後ろ端の担ぎ手は、稲刈りの終わったばかりの田んぼにまで入って通っていたのを覚えています。
でも今にして思えば曲がろうと思えば曲がれたのに、無理にこじまわしていたように思われますが(笑)
(写真は胡麻生)
中道 通常保管時は担い棒を取り外した状態で格納されています。
外した担い棒は非常に長くかさばるため、小屋の中ではなくて別の場所で保管している地区が多いです。

担い棒は反りや割れを防ぐため雨と直射日光を避けて保管されます。幕や鳴り物も集会所などで別に保管されています。
(写真は中道)
中島 担い棒のことを指す「おこ」という呼びかたは天秤棒など肩に担ぐ棒を指す方言で、明治生まれだった管理人の祖父も生前よく使っていました。
橋本以外の地域でも言うんでしょうか?

さすがに最近は一般的な言葉では無くなりました(というか天秤棒など肩に担ぐものが少なくなり死語になりました)が、
祭礼用語として残っていくのでしょうか。(写真は中島)
恋野 端には飾り金具が付けられて、町名や神社紋の装飾が施されているものが多くなりました。
上地車では両端に飾り金具が施されていますが、橋本型では前だけ装着して後ろには付いていない地区が多いです。
その理由が橋本独特なのですが・・・

「見た目重視で装着したい」という意見と「危険防止のため不要」という両論があり、前にだけ付けた地区が結構多いのだそうですが・・・
飾り金具のどこが危険?!と疑問に思われるのでは。
写真は恋野 やはり前にだけ付いています。
境原 前方 それは橋本型だんじりの担い練りが原因です。
激しく練りまわす際に担い棒の四隅は地面にあたることがありますが、担い手が手を挟んだ場合に金具により深刻な怪我や傷害を負う恐れがあることと、担い棒後端につけられた太鼓を叩く囃子方が誤って怪我をすることが懸念されるためです。
写真の境原も前方には金具が光っているのが見えます
境原 後方 しかし後方には担い棒の飾り金具は見られません。
これは激しい練りの際に誤って担い棒先端にバチを振る手が当たることがあり、囃子方の手を怪我から守る目的であえて金具をつけていないのです。
しかし例外もあります。写真の垂井には金具が付けられていました。
垂井 大昔はどこの地区でも金具は全く無かったようですが、みかけもあって年々増加傾向にあります。
最近はすっかり一般的になりましたが曳きだんじり文化の影響があるようです。写真は垂井で平成12年に新調されました。

下兵庫 下兵庫では従来「共」という文字の飾りでしたが、平成になって新調することになり金具を下兵庫の「兵」の字にするか、伝統の共進社を示す「共」にするかで議論が起きたそうです。結果は伝統を守って「共」の飾り金具をあつらえました。

お話を伺い写真を探しましたが残念ながら見当たりませんでした。これは小屋の入口に掲げられた神社紋に兵のデザイン。
平野 だんじりは祭礼日宵宮の朝から半日近くをかけて組み立てられます。
当然のことながら釘やボルトなどは一切使わずにロープで括り付けて組み上げていきます。
綿のロープを使う地区が多いですが、大昔は担い棒を括るのにどこでも藁縄が用いられていたと聞きます。

なかなか良い縄が手に入りにくくなった現在では、伝統の藁縄を使っている地区はほとんど無いようです。
藁縄は片づけの際に鎌で切ればあっと言う間にバラバラに解体出来るのも魅力です。
また水や酒で湿すことで適度な強度をコントロールすることも可能なのだそうです。
(写真は平野)
恋野 そう言えば祇園祭の鉾は今でも藁縄を用いて組み立てられています。
鉾建てには作事方が縄がらみという技法をもって鉾を組み立てています。

結び方にも決まりがあり技術を要するところです。

二日間の祭にゆるんだりすることのない括りは腕の見せ所。

(写真は恋野 酒呑童子さんご提供)
胡麻生 胡麻生では後端の太鼓台に専用の角材を使用しています。
太鼓の括り付けには各地区の特徴が見られますが、このテーマについては後日ご紹介させていただきます。
(胡麻生)
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